民泊の避難経路図の書き方
最初にやることは、管轄の消防署への相談です。書く項目は地域で少しずつ違うからです。そのうえで、下のチェックリストに沿って図を作ります。
根拠は住宅宿泊事業法、国のガイドライン、総務省消防庁のリーフレット、東京消防庁の記載例です。2026年10月時点の内容です。
法律が求めるのは「避難経路の表示」です
住宅宿泊事業法第6条は、民泊の事業者に、宿泊者の安全のための措置を求めています。その一つが「避難経路の表示」です。施行規則第1条第2号に「届出住宅に、避難経路を表示すること」とあります。
法律と規則には、書く項目や大きさ、言語の決まりはありません。代わりに国のガイドラインが、地域の条例を確認するよう求めています。
市町村の火災予防条例により規制される地域もあることから、当該条例の規制内容を確認し、規定された事項を表示に盛り込む必要がある。
必要に応じて「避難経路」を各宿泊室に表示することも望ましい。
住宅宿泊事業者等が宿泊者に対して避難場所等に関する情報提供を行うことが望ましい。
記載事項チェックリスト
「必須」は法律か、消防庁・東京消防庁の資料で書くよう示されているものです。「地域による」は条例や消防署の指導で変わるもの、「推奨」は資料で望ましいとされているものです。
| 項目 | 区分 | ポイント | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 避難経路を表示する | 必須 | 民泊(届出住宅)すべてが対象です。 | 住宅宿泊事業法第6条、施行規則第1条第2号 |
| 火災予防条例で決められた事項 | 地域による | 市区町村ごとに違います。消防署で確認します。 | ガイドライン p.23 |
| 現在位置(YOU ARE HERE) | 必須 | 図を見ている人がいる場所。貼る部屋ごとに変わります。 | 消防庁リーフレット、東京消防庁 記載例 |
| 避難経路を2つ以上 | 必須 | 玄関から逃げられない場合の経路も書きます。 | 消防庁リーフレット |
| 消火器・消火栓の位置 | 必須 | 設置している消火設備をすべて。 | 消防庁リーフレット、東京消防庁 用語集 |
| 避難器具(はしご・ハッチ)、バルコニーの隔板 | あれば必須 | 建物にある場合に記入します。 | 消防庁リーフレット |
| エレベーターを使わない旨 | 必須 | 火災時に止まることがあるためです。 | 消防庁リーフレット、東京消防庁 記載例 |
| 火災の伝達方法・避難上の留意事項 | 地域による | 東京では文章で書き添えます。 | 東京消防庁 民泊ページ・用語集 |
| 外国語の併記 | 推奨 | 東京消防庁が指導しています。予約時に示した言語に合わせます。 | 東京消防庁 用語集、ガイドライン(法第7条) |
| 凡例 | 推奨 | 記号の意味を日英で並べます。 | 東京消防庁 記載例 |
| カラーと図で分かりやすく | 推奨 | 経路は色で塗ると読みやすくなります。 | 消防庁リーフレット |
| 各宿泊室への表示 | 推奨 | 間取りや立地に応じて。 | ガイドライン p.23 |
| 屋外の避難場所の案内 | 推奨 | 近くの公園や広域避難場所など。 | ガイドライン p.23 |
| 図の向きを貼る壁に合わせる | 推奨 | 京都市消防局が指導している例があります。 | みやこ事務所(京都)の記事 |
| 非常用照明・感知器・誘導灯の位置 | 推奨 | 設置していれば書き込みます。 | 北はりま消防本部 リーフレット |
住宅宿泊事業法 第6条・第7条 · 国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則 第1条・第2条 · 住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)p.23(最終改正 令和6年12月24日) · 総務省消防庁「民泊サービスを提供する方へ」リーフレット · 東京消防庁「新たに民泊を行おうと考えている皆様へ」 · 東京消防庁 民泊 用語集 p.9「避難経路図の書き方」 · みやこ事務所(京都の行政書士)「簡易宿所の許可申請と避難経路図の向きについて」 · 北はりま消防本部 民泊リーフレット
作る手順
- 消防署に相談する。東京消防庁は「開業の準備に先立って、必ず最寄りの消防署に相談してください」としています。建物が消防法上「住宅」か「宿泊施設」かで、かかる決まりが変わります。
- 間取り図を用意する。不動産会社の図面、建築図面、手書きでもかまいません。各階の出口・階段・ベランダが分かるものにします。
- 経路を2つ引く。玄関から外への経路と、玄関が使えないときの経路(ベランダの避難はしご、隣戸への隔板など)です。
- 設備を書き込む。消火器、避難器具、感知器、非常用照明の位置を入れます。
- 凡例と注意書きを添える。「火災時はエレベーターを使用しないでください」など。英語なども併記します。
- 部屋ごとに現在位置を入れ、向きを合わせる。貼る壁が図の上側になるようにすると、見た人が迷いません。
- 宿泊室の見やすい場所に貼る。あわせて119番通報シートも用意すると、法第7条の緊急連絡先の案内にも使えます。
東京消防庁「新たに民泊を行おうと考えている皆様へ」 · 総務省消防庁「民泊サービスを提供する方へ」リーフレット · みやこ事務所(京都の行政書士)「簡易宿所の許可申請と避難経路図の向きについて」
避難経路は2つ以上とし、玄関からの避難が困難な場合における避難経路についても表記しましょう。
エレベーターは火災時に停止する場合があり、使用することは危険です。火災時には使用されないように周知しましょう。
設置されている消火設備や避難器具などを確認し、カラーや図などを使い分かりやすく表記しましょう。
記載例と見比べて、抜けやすい点
指摘の件数を集めた公的な統計はありません。ここでは、公開されている記載例と見比べたときに抜けやすい項目と、実際の指導例をまとめました。
- 経路が玄関からの1つだけで、2つ目の経路がない。
- 現在位置がない、または全部屋で同じ位置になっている。
- 消火器を置いているのに、図に書いていない。
- 図の向きが貼る壁と合っていない(京都市消防局の指導例)。
- 注意書きが日本語だけで、外国語の併記がない。
- 東京で、火災の伝達方法・避難上の留意事項の文章がない。
参考:北はりま消防本部のリーフレットは、小規模な民泊で誘導灯の設置を免除する特例の条件の一つとして、見やすい位置への避難経路図の掲示などを挙げています。免除の可否は消防署が判断します。
みやこ事務所(京都の行政書士)「簡易宿所の許可申請と避難経路図の向きについて」 · 東京消防庁 民泊 用語集 p.9「避難経路図の書き方」 · 北はりま消防本部 民泊リーフレット
よくある質問
- 避難経路図は何枚必要ですか?
宿泊室ごとに1枚が目安です。東京消防庁は「宿泊室内の見やすい場所」への掲示を求めています。現在位置は部屋ごとに違うので、同じ間取りでも部屋の数だけ作ります。
- 手書きでもいいですか?
法律に様式の決まりはありません。手書きでも、必要な事項が分かりやすく書かれていれば足りる場合があります。ただし、地域の条例や消防署の指導で求められる項目は入れてください。
- どこに貼ればいいですか?
消防庁のリーフレットは「玄関ドアなど分かりやすい場所」、東京消防庁は「宿泊室内の見やすい場所」としています。京都市では、貼る壁が図の上側になるよう向きを合わせるよう指導された例があります。
- 英語の表記は必要ですか?
東京消防庁は外国語の併記を指導しています。また住宅宿泊事業法第7条で外国語の案内が必要な「外国語」は、ガイドラインで予約時に示した言語とされています。英語のほか、宿泊者の多い言語を加えると親切です。